<Header>
<Author: 韓愈>
<Title: 八月十五夜贈張功曹>
<Format: 格式不明>
<Year: 1990>
<BookName: 唐詩三百首詳解  下卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 八月十五夜　張功曹に贈る>
<BookPage: 62>
<UsedPage: 1>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
纖雲四卷天無河，
清風吹空月舒波。
沙平水息聲影絕，
一桮相屬君當歌。
君歌聲酸辭且苦，
不能聽終淚如雨。
洞庭連天九疑高，
蛟龍出沒猩鼯號。
十生九死到官所，
幽居默默如藏逃。
下牀畏蛇食畏藥，
海氣濕蟄熏腥臊。
昨者州前搥大鼓，
嗣皇繼聖登夔臯。
赦書一日行萬里，
罪從大辟皆除死。
遷者追廻流者還，
滌瑕蕩垢清朝班。
州家申名使家抑，
坎軻祗得移荆蠻。
判司卑官不堪說，
未免捶楚塵埃間。
同時輩流多上道，
天路幽險難追攀。
君歌且休聽我歌，
我歌今與君殊科。
<End Poem>
<Translation>
薄雲が四方に巻き収められるように退いて、空に天の川も見えず、清涼な風がその空を吹き渡って、月光が川波のように広がっている。砂はらかに続き川の水が静かになって、いっさいの物音も姿もすっかり消えた。さあ君に一杯の酒を勧めよう。君よ歌いたまえ。 
そこで歌った君の歌は、声は悲しくそのことばは、まことに痛ましい。最後まで聞き終えることもできないで、涙が雨のように流れた君は次のように歌う。 
洞庭湖の水は天にまで連なっていて、九疑山は高くそびぇ、みずちと竜とが洞庭湖に出没したり、
猩猩やむささびが九疑山に叫び声をあげる。十人中九人が死者となるほどの危険を免れて、任地である陽山の役所に到着したが、奥深い住居に過ごして沈黙を守り、まるで世を逃れて隠棲しているようである。寝台を下りて外出する時には、蛇を恐れ、食事の時にには、誤って、猛毒の薬を食べてしまうのが心配である。海から来る湿気が、しめって陰気であり、においはなまぐさいといった南方の辺地である。 
先ごろ、州の役所の前で太鼓を打ち鳴らし、皇太子が天子の聖位を継いで即位し、賢臣を登用することになったと知らせた。赦免状は、一日に千里を行く速さで伝えられ、罪人は死刑から、みな死を許され、左遷された者は召還され、流された人は帰ることになった。邪悪な臣下を除去し、朝廷を清らかにすることとなった。刺史はわれわれの名を赦免の人数に加えて上申したが、観察使がその上申書を、途中でさしおさえてしま い、不遇なままに、南方の辺地の江陵に移ることができたにすぎない。公文書の誤りを正し批判する官である功曹参軍は低い官職であって、お話しにならないほどで、落ち度があれば土ぼこりの中でむち打たれる恐れから、まだ免れてはいない。同時に流されたなかまの多くは、帰京の途に就いたというのに、都への道中は猩奥深くけわしく、追いすがることはできにくい。 
そこまでで、君よ君の歌をまあまあ、とにかく打ちきって、今度はわたしの歌に耳を傾けなさい。わたしの今歌う歌は、君の悲しい歌と歌のなかみがちがうのだ。一年中の明かるい月の中で、八月十五夜の今夜の月が、最もすばらしいのだ。人の一生というものは、天命によって定まっていて、ほかの何ものにも左右されることはない。酒があるのに飲まなかったら、この明月の夜を、どうしたらよかろうかこの仲秋の名月を眺めて存分に楽しもうではないか。
<End Translation>
<Formatted Translation>
薄雲が四方に巻き収められるように退いて、空に天の川も見えず、
清涼な風がその空を吹き渡って、月光が川波のように広がっている。
砂はらかに続き川の水が静かになって、いっさいの物音も姿もすっかり消えた。
さあ君に一杯の酒を勧めよう。君よ歌いたまえ。 
そこで歌った君の歌は、声は悲しくそのことばは、まことに痛ましい。
最後まで聞き終えることもできないで、涙が雨のように流れた君は次のように歌う。 
洞庭湖の水は天にまで連なっていて、九疑山は高くそびぇ、
みずちと竜とが洞庭湖に出没したり、猩猩やむささびが九疑山に叫び声をあげる。
十人中九人が死者となるほどの危険を免れて、任地である陽山の役所に到着したが、
奥深い住居に過ごして沈黙を守り、まるで世を逃れて隠棲しているようである。
寝台を下りて外出する時には、蛇を恐れ、食事の時にには、誤って、猛毒の薬を食べてしまうのが心配である。
海から来る湿気が、しめって陰気であり、においはなまぐさいといった南方の辺地である。 
先ごろ、州の役所の前で太鼓を打ち鳴らし、
皇太子が天子の聖位を継いで即位し、賢臣を登用することになったと知らせた。
赦免状は、一日に千里を行く速さで伝えられ、
罪人は死刑から、みな死を許され、
左遷された者は召還され、流された人は帰ることになった。
邪悪な臣下を除去し、朝廷を清らかにすることとなった。
刺史はわれわれの名を赦免の人数に加えて上申したが、観察使がその上申書を、
途中でさしおさえてしまい、不遇なままに、南方の辺地の江陵に移ることができたにすぎない。
公文書の誤りを正し批判する官である功曹参軍は低い官職であって、お話しにならないほどで、
落ち度があれば土ぼこりの中でむち打たれる恐れから、まだ免れてはいない。
同時に流されたなかまの多くは、帰京の途に就いたというのに、
都への道中は猩奥深くけわしく、追いすがることはできにくい。 
そこまでで、君よ君の歌をまあまあ、とにかく打ちきって、今度はわたしの歌に耳を傾けなさい。
わたしの今歌う歌は、君の悲しい歌と歌のなかみがちがうのだ。
一年中の明かるい月の中で、八月十五夜の今夜の月が、最もすばらしいのだ。
人の一生というものは、天命によって定まっていて、ほかの何ものにも左右されることはない。
酒があるのに飲まなかったら、この明月の夜を、どうしたらよかろうかこの仲秋の名月を眺めて存分に楽しもうではないか。
<End Formatted Translation>